今なぜジョージアワインなのか?
- By: Voiceofground
- カテゴリー: ジョージアのワイン職人
みなさんは、ジョージアワインをご存じでしょうか。いえ、それ以前にジョージアという国をご存じでしょうか?
ジョージアは、いわゆる東欧に当たります。ロシアの南、トルコの北なので、東の外れですね。カスピ海と黒海とにはさまれた、いわゆるコーカサス地方にあります。コーカサス山脈というのは、カスピ海と黒海との間を東西に走っているのですが、その南斜面に位置する横に細長い国がジョージアなのです。
その意味で、ジョージアはコーカサス山脈の麓の国といえるでしょう。コーカサス山脈の恵みによって、自然がとても豊かなところなのです。
そんなジョージアは、1989年までソ連邦の一部でした。ソ連の崩壊後、いち早く独立を果たしましたが、しばらくは「グルジア」という名前で呼ばれていました。多くの人にとっては、こちらの名前の方が馴染みがあるかもしれませんね。
しかし「グルジア」というのはロシア語読みで、今はロシアとあまり仲の良くないジョージア政府は、英語表現の「ジョージア」という呼び方に変えてほしいと、日本政府に呼びかけました。それに応えて日本でも、2015年からジョージアという呼び方に変わったのです。ですので、まだあまり馴染みがない上に、ジョージアというとアメリカのジョージア州を連想される方も多いので、言ってもわかってもらえない場合が多々あります。
そんなジョージアという国は、知る人ぞ知るワインの名産地でもあります。実は今、西欧を中心に、このジョージアワインの人気がとても高まっているのです。
ところで、話は少し変わりますが、みなさんは『サピエンス全史』という本をご存じでしょうか? あのビル・ゲイツやバラク・オバマも読んで感動したという数年前の世界的なベストセラーで、日本でももちろん大ヒットしたので、お読みになった方もいらっしゃるかと思います。
この『サピエンス全史』は、文字通りホモ・サピエンス——つまり我々人類の、古代からの歴史について論じている本です。人間がどのような歴史を辿って今に至ったのか、かなり長めの本なのですが、それでも分かりやすく、しかもとても興味深く紹介した本です。
この本の中に、ユニークな記述があります。それは、人間というのは誕生してからおよそ100万年の歴史を持つのですが、1万年くらい前から徐々に稲作が始まって、日本でも2000年くらい前に爆発的に広まったため、縄文時代が終わって弥生時代へと移り変わっていきました。日本のみならず世界中のあらゆる場所で、それまで長い間狩猟採集生活をしていたのが、稲作の普及で農耕生活へと移り変わっていったのです。
この移り変わりによって一番大きく変わったのが食生活です。それまでは木の実や豆類中心だったのが、稲類中心に変わりました。また、世界中で稲類が栽培されるようになり、稲類の数もまた爆発的に増えたのです。
そんなふうに、人間は稲のおかげでこの1万年間、生きながらえてきましたし、またそのおかげで文明を発展させることもできました。それまでの99万年間、原始的な生活を送っていたのに、稲作が始まったこのたった1万年で、今のような科学技術を手に入れるまでになったのです。
そんなふうに、稲作は人間生活を激変させました。ところが、その稲と人間の関係が、ここ10年で大きく変わってきているのです。日本でも海外でも、稲類の消費が大きく落ち込んできています。お米の消費量は、最盛時のざっと半分になったといわれていますし、パンを食べる人の数もぐっと減ったそうです。つまり、ここ数10年で、人々は再び稲を食べなくなってきているのです。
どうしてそうなっているのでしょうか?
それは、文明が発達した結果、食料を調達する技術が高まり、人々が食べるものに困らなくなったからだといわれています。数10年前まで、人々はいつも食料の調達に四苦八苦していました。そんなとき、栄養価の高い稲類はとてもありがたい食べ物だったのです。そのため、人間にとっては稲類中心の食生活を送るのがきわめて自然なことでした。
ところが、食料が十分に調達されるようになると、稲類はむしろ栄養価が高すぎ、かえって健康を害するようになってきました。日本でも海外でも、今や食糧難で死ぬ人より、食べ過ぎによる栄養過多で死ぬ人の方がぐっと増えてしまったのです。
そのため、人類はここに来て急速に「稲離れ」が進むようになりました。また、それに伴って食生活の変化も起きるようになったのです。
その変化とは、一言で言うと「1万年前の狩猟採集生活に逆戻りした」ということです。その頃の食生活の方が、今の食料豊富な時代にはむしろ適しているとして、人々が木の実や豆類など、古代の人々と同じような食べ物を嗜好するようになったのです。
もちろん、稲類はいまだに人気ですし、人間の嗜好はそう簡単には変わりません。それでも、人々の想像を上回るスピードで、人類の食生活は劇的に変化しつつあるのです。
そんな時代に、見直されている飲み物がありました。それはワインです。しかも、現代の洗練された高度に文明的なワインではなく、昔ながらの製法で作った土着的なワインが見直されているのです。
ワインというのは、最古のものは8000年前にまで遡るといわれています。その頃の遺跡から、ワインを醸造していた痕跡が見つかっているのです。
8000年前にはすでに稲作が始まっていましたが、まだまだ狩猟採集生活が主流でした。つまり、木の実や豆類を中心に食生活を営んでいた時代です。
そういう時代にも、人々はワインを飲んでいたのです。その意味で、ワインも一つの古代食といえるでしょう。
実際、ワインも飲みすぎは良くありませんが、ポリフェノールをはじめ健康にいいということはさまざまな形で証明され、今では一つの常識ともなっているくらいです。なんと白ワインには、脂肪を燃焼させ痩せるという効果もあるらしいのです。
そういうふうに、味はもちろん健康にもいいということで、今、西欧を中心に昔ながらの製法で作ったワインというものが大いに見直されているのです。
そして、そんな始まりつつあるブームの中心にあるのが、実はジョージアワインなのです。というのも、先ほど述べた「8000年前にワインを醸造していた痕跡」が見つかったというのは、実はジョージアにおいてなのです。それ以上前にワインを醸造していた痕跡はいまのところ見つかっていないので、ジョージアは「ワイン発祥の地」あるいは「世界最古のワイン生産国」ともいわれています。
ですから、ジョージアが新時代のワインとして注目されているのは、ある種の必然でもあったのです。また、そこにはもう一つ、大きな理由がありました。それは、古代の製法を可能な限り再現し、昔ながらの健康的で美味しいワインを復活させようという動きが今、高まりつつあるということです。何人かの気鋭のワイン職人たちが10年ほど前から始めたのですが、最初、それは小さな動きに過ぎませんでした。しかし数年経った頃には多くの人を巻き込むようになり、どんどんと広がっていきました。そうして今では大きなうねりとなって、西欧中、引いては世界中に広がりつつあります。ジョージアから遠く離れた日本でこそ、今はまだあまり人気があるとはいえませんが、その波は確実に押し寄せつつあります。古代の製法にこだわったワインを専門に輸入する業者さんも現れて、静かなブームとして広がりつつあるのです。
そこで私たちは、そんなブームの現場を確かめようと、遠くジョージアまで取材に赴き、その古代の製法にこだわったワインはどのようにして作られているのか、取材をしてきました。そこで出会ったのは、えもいわれぬ美味しさを持った豊穣なワインと、深い感性とやさしい人柄とに溢れた、魅力的なワイン職人の方々でした。
そこでここでは、そんなワイン職人の方々の中から、3人の中心的な人物を紹介していきたいと思います。彼らを知ることによって、私たちは「なぜこれほどジョージアワインが魅力的なのか?」ということがあらためて分かったような気がしました。そうして、このワインはこれからますます多くの人に求められるようになるだろうと確信したのです。
その3人のワイン職人とは、以下の方々です。
彼らを知ることは、ジョージアワインの魅力はもちろん、今の社会において「真の豊かさとは何か?」ということを考えさせられる、一つのきっかけともなります。
そのため、彼らの記事を読んでいただきたいのはもちろんのこと、そのワインもぜひ、お試しいただければと思います。昔の製法にこだわった伝統的なジョージアワインは、こちらでお買い求めいただけます。
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